復調の航空業界、人手不足解消が課題

2023年度の航空業界はコロナ禍を乗り越えた。と言って良いだろう。
年間の業績は3年ぶりに黒字となりコロナ以前の活気を取り戻した。
消費者の旅行意欲が着実に数字となって現れている。

それに伴い旅行需要に応えるには人手不足が懸念されている。
コロナ禍で一度離れた人材が全ては戻っておらず、人手不足からくる航空便不足にもなりかねない状況だ。
せっかくのインバウンド需要を取り逃がさないためにも早急な対応が必要だ。
新卒企業就職人気ランキングでは、コロナ禍で100位圏外となっていた。
ANA、JALも2024年度ではANA49位、JAL77位と順位を上げてきており期待を持てる状況だ。

また、旅行者のパターンがコロナ禍を終えて変わってきている。
今まではビジネス利用は大きな顧客で、価格よりも日程や、時間を重視する形が多かった。
しかし、リモートワークが充実したことにより、週末の地方への予定を、木曜などから家族で航空機を利用、金曜はリモートワークをこなし、週末に地方での用事を済ませて週明け月曜などに戻るなど、ビジネスと旅行を混在させたようなパターンが出てきたのだ。

海外からの訪日客も、メジャーな観光地ではなく、地方都市などに流れる傾向も見受けられる。
これは訪日客が何度と来日したことにより、より『日本らしさ』を求めてのことのようだ。
地方都市の空港の場合、地場企業が請け負っている場合があり人材不足の解消は簡単にはいかないようだ。

今後の課題の一つに、SAFの利用が挙げられている。
経済産業省は2030年から航空機の燃料の1割にSAFを使うことを石油元売り会社に義務付けることにしている。これらの動きは二酸化炭素抑制というヨーロッパの動きに足並みを揃える形だ。
日本で現在考えられているのは、食用廃棄油の再利用を使ったものだが、価格の高さが専らの課題となっている。そのため、アメリカ産のSAFを利用することも検討の一つとなっているようだ。

手放した人材の確保、SAFの開発など大きな課題はあるものの、航空業界は今後も成長産業であり、需要が増えて行くのは明らかだ。
コロナ禍のことを思えば明るい先行きが見えてきたと言っていいのではないだろうか。

ポストコロナを見据えた世界

世間はパンデミックの脅威を乗り越えた。と言っては言い過ぎだが、世界的にみると過渡期は過ぎた様相だ。
世界の航空需要、国際線においてはパンデミック前の6割までは復調してきている。
前年比で最も伸びを示したのは欧州で425%となっている。ロシアのウクライナ侵攻があるがその影響はほとんど見られない。ウクライナ周辺国から国外へ避難する人々の動きもあるようだ。
そんな中、アジア太平洋の回復は2割弱と大幅に遅れをとっている。政府の規制が要因の一つである。
日本での国際線においては2022年10月11日以降から訪日客の上限が撤廃され回復が予想される。

国内線については、各国堅調に推移しており。日本においては2019年度比47%まで復調している。アメリカ、ブラジルも順調な回復ではあるが、中国のみオミクロン株流行による大規模ロックダウンや行動制限により、大きく減少したままだ。

一方、旅客輸送の穴を埋めるべく進めた国際貨物輸送は順調に増加している。コロナ禍で需要が高まった、電子半導体部品、自動車、医薬品などの国際輸送を担い、2019年の貨物量を上回る水準で2021年以降は推移しておりその役割を果たしている。
ANAなどは戦略的に増やすことで減少した旅客分を補う戦略をとっている。

JALはLCC戦略を本格的に始動させ、中距離国際線のLCC「ZIPAIR」でホノルル線を再開、シンガポール線を就航した。
JALは、3社(Jetstar、ZIPAIR、春秋航空)をグループLCCとしたことで、今後のLCC体制の構築を進めている。

航空業会誌によると、回復のキーワードは、定時運行便と、LCCだという。
制限ある時間での旅行者や、ビジネスでの利用には、定時運行というものは大変重要な事項である。
また、短距離での運行や、格安に重きを置くLCCにおいては、パンデミック化であっても業績を伸ばすことができたようだ。

世界空港の定時出発率ランキングの1位になったのは羽田空港だった。中規模空港、小規模空港でも、関西国際空港と、松山空港が1位となり、日本が占めた。日本の航空業会のこれからの復調が期待される。

コロナ禍で大打撃、航空業界の今後と代替燃料

 この度のCOVID-19の世界的流行によって航空業界は大きなダメージを受けた。航空需要が9割減という数字が重く語っている。世界的にも数多くの航空会社が破産に陥り、日本においてもLCCのエアアジアジャパンがその流れを受けた。
人々の移動が制限される中で伸びたのは貨物事業であった。世界的なコンテナ不足から、貨物の輸送比率は2019年の12%から20年には34%に増えたことは、航空業界で唯一の明るい材料となった。
ビジネスでの移動需要については、コロナ禍でテレワークが発達推奨されるに伴い激減している。そのため、旅客需要の回復は必須であり、ワクチンの普及によるこれからの人流の流れに期待したい。実際にここ2年ほどの停滞により、旅行者のフラストレーションはかなり溜まっていると思われ爆発的な移動につながる日もそう遠くない。旅客需要については価格に敏感に左右され、そのために大手業界が値下がりに踏み切ることも考えられる。その場合、LCCとの差別化が難しくなり更なる値下げ、格安だけでないサービスの提供が求められてくるのではないか。

日本においてはまだ大きな流れは見られないが、ヨーロッパ主導による脱炭素の波はおおきく、短距離航空路線が鉄道に切り替えられるという動きもある。日本にもその流れがおこらないとはいえず、実際ヨーロッパでは「飛び恥」(Flighi Shame)という言葉まで生まれ二酸化炭素の排出が多い飛行機に乗るのは恥ずかしいという考え方まで出てきている。
脱炭素の流れから石油を使用しない代替燃料SAFの使用を今後進めていく方針があり、2020年ノルウェーでは航空会社で使用する燃料のうち0.5%を代替燃料であるSAFを使用するよう義務付けることになった。2030年にはこの比率を30%にまで引き上げる方針で、今後代替燃料の使用にシフトしていくのが世界的な流れとなってきている。
このSAFとはトウモロコシなどの植物原料や、食品廃棄物、廃プラスチックなどさまざまな原料から開発されている。従来の化石燃料よりも80%程度二酸化炭素の排出を抑えることができるとされている。現在は特に欧州での開発が進んでいるが、生産できているSAFは世界需要に対しての0.03%にすぎず争奪戦になっているのだ。日本はこの規制に完全に乗り遅れており、代替燃料を輸入に頼らざる得ない状況がある。このままでは飛行機が飛ばせないという未来も現実味を帯びてくることを鑑み、日本最大手2社、ANAとJALは共同でレポートを発表、国産SAFの必要性を訴えている。このレポートによると2050年までには需要の全てをSAFで賄う必要があり、その頃には国産と輸入を半分ほどの割合にしていきたいという。巨額の投資も必要となるため、官民一体での取り組みが必要だと訴えている。
コロナ回復後は、世界的にも航空需要は増加していくことが予測されている。
代替燃料の国産化など多くの問題をどう乗り越えるのか、今後の流れに注視していきたい。

日本でLCCを発展させていくには何が必要なのか

これまでの日本の航空市場は、最大需要地である首都圏空港の容量が不足しており、LCCブランドの浸透の最大の制約となっていた。しかしながら、今後は2012年以降の羽田・成田空港の容量拡大に伴うLCCへの配分余力の発生や、世界的な規制緩和(オープンスカイ政策)の進展と国内・国際を問わない空港間競争による誘致競争の激化、アジアパシフィック地域での中・長距離LCCビジネスモデルの定着などからLCCブランド浸透の基本条件は整い始めていると考えられる。

それ故、①今後の羽田・成田空港の容量拡大に伴うLCC枠の確保すること、②世界的なオープンスカイ政策の進展と国内際を問わない空港間競争の激化による誘致合戦に勝つこと、③アジアパシフィック地域における経済成長の進展と中・長距離LCCビジネスモデルを定着させること、さらに④消費者の行動パターンや嗜好の変化によるLCC利用の活発化などの要素が必要条件となってくると考えられる。

日本にLCCが浸透した場合、既存大手航空会社の経営悪化が心配されると思われがちだが諸外国の事例や日本の新規参入の例を見る限り、そのような心配はない。もちろんLCCの低運賃がマーケット指標になってしまえば類似路線の交通が提供する最低運賃の価格帯がそこまで下がることが予想される。しかしその影響は既存大手航空会社のみに留まらず、高速バスや新幹線といった他交通機関の運賃低下を促すことにつながるため、様々な交通機関を利用する顧客にとっては喜ばしい状況になると考えられる。つまり国内でのLCCが発達すれば、あらゆる交通機関の価格競争が始まることが期待され、観光やレジャーなどの個人消費が刺激され国内の景気回復に大きく貢献できるのではないだろうか。

日本の拠点空港は羽田?

日本の拠点空港候補4空港は、いずれも国際線と国内線が共に運航されている。

しかし、拠点空港になるためには、その空港に国際線と国内線の多くの路線が集まることが必要とされている。まずは、国内線について分析する。4空港のうち国内線の路線数が豊富なのは、羽田空港である。2011年度の国内航空旅客数合計7905万人のうち、羽田便利用者は5258万人で、国内旅客の約7割を羽田利用者で占めている。また、2012年度路線別輸送実績の上位20路線のうち、15の路線が羽田を結ぶ路線であった。路線数においても、羽田は国内45の空港と結ばれていて、成田は国内16、関空は国内12、中部は国内18の空港と結ばれていることを比べると、羽田の国内線の路線数は圧倒的に多いといえる。

しかし、成田、関空ではLCCの就航が増加し、LCC専用ターミナルが関空には2012年秋に完成し、成田にも2014年度に完成される予定で、LCCの国内線の需要の増加が期待される。一方、国際線に限っていえば、成田空港の輸送実績が他の3空港と比べて高い。しかし、成田は1本しかない4000m級の滑走路、24時間運用ができないといった問題から、発着枠に余裕がない。その弱点を補う形で開港された関空や中部も高い着陸料により、便数の減少が続いている。ところが、羽田は2010年のD滑走路と新国際線ターミナル完成以降、国際線の便数は増加傾向にあり、2014年3月末から国際線ターミナルが拡張されると同時に、日系航空会社の羽田発着の国際線は1日当たり26路線から42路線に拡大する予定である。また、羽田の国際線旅客数も順調に増加し、2014年3月期には802万人と成田の4分の1の水準に達する見込みである。

日本の拠点空港候補4空港の中で、アジアの拠点空港として機能できる日本の国際空港は羽田空港だ、というのが個人的な見解である。しかし、羽田空港が日本の拠点空港として機能するための課題がある。発着枠の拡大に向けた設備面の拡充や飛行ルートの見直しだ。国土交通省は発着枠の拡大に向けて、需要の減った国内線の発着枠の一部を国際線用に振り替えたり、5本目の滑走路や新たなターミナルビルをつくったりする案が出ているが、設備面での拡充では財源の工面が課題である。投資額が膨らむと、着陸料に跳ね返り、空港の競争力を逆に損なうことに留意する必要があるからだ。飛行ルートの見直しについては、東京上空の飛行を解禁する案も議論する可能性があるが、新たな騒音問題の浮上も考えられ、近隣自治体などとの合意形成が不可欠になる。設備面や財源面などの課題の克服によって、羽田の発着枠が拡大され、乗客が利用しやすい設備が整い、都心とのアクセスも整備されれば、羽田空港がアジアの拠点空港として機能し、日本の空の玄関口としても機能できると考えられる。

日本の拠点空港候補

日本の空港は空港法により、大きく分けて、拠点空港、地方管理空港、その他の空港、共用空港の4つに分類できる。

拠点空港は、①会社が設置及び管理する会社管理空港(成田・中部・関空・大阪(伊丹))、②国が設置及び管理する国管理空港(東京(羽田)、新千歳(札幌)、福岡、那覇など)、③国が設置し、地方公共団体が管理する特定地方管理空港(旭川、帯広、秋田、山形、山口宇部)、の3つを掲げる空港である。地方管理空港は地方公共団体が設置及び管理する空港である。その他の空港は拠点空港、地方管理空港及び公共用ヘリポートを除く空港である。共用空港は自衛隊が設置及び管理する飛行場である。日本の国際空港がアジアの拠点空港として機能するには、空港法第4条第1項に掲げる成田・東京(羽田)・中部・関空・大阪(伊丹)の5空港が候補に挙げられる。これらの空港は年間の利用客数が1,000万人以上で、拠点空港として十分な数である。

しかし、国内線しか運航されていない大阪(伊丹)は拠点空港候補から除外されると考えられる。理由としては、世界の空港には国際線と国内線で棲み分けされた空港がほとんどないからである。それは国際線が主流の関空と国内線運航のみの大阪(伊丹)との間は離れていて、その2空港を結ぶアクセスも悪く(バスで75分)、関空と大阪(伊丹)で国際線と国内線の乗り継ぎにはとても不便であり、1つの空港で国際線と国内線の乗り継ぎが便利であることが必要なためである。

上記4空港のうち、国が管理しているのは東京国際空港(羽田)のみである。2000年9月から航空局において開催された「首都圏第3空港調査検討会」で検討された結果、既存ストックの有効活用、旅客の利便性等の観点から、首都圏第3の空港を新設するより大きな優位性があるため、羽田空港の再拡張案を優先して推進することとされた。一方、都心からのアクセスで不便が生じる成田空港では、2010年に京成電鉄の成田空港新線が開業し、新線経由となる「スカイライナー」が新幹線以外で最速となる時速160kmで走行、都心~空港間を30分台で運転できるようになった。しかし、香港のエアポート・エクスプレスは香港島の中心と空港の間を12分間隔、所要23分で結ぶことなどを考えると、成田空港が現在でもアジアでは最も時間的に市内から遠い空港となっている。日本で完全24時間空港の条件を満たしているのは、関西国際空港のみである。完全24時間空港は、4000m級の滑走路を複数所有する空港のことで、一方の滑走路を深夜のメンテナンス等で閉鎖されても、他方の滑走路を運用できることから、24時間完全に運用できる空港を意味する。しかし、関西国際空港はその設備に見合った需要を得ていないのが現状である。

空港の概要

日本で定期旅客便が就航する空港で最も短い滑走路は800mで、主に離島の空港で小型プロペラ機の運航のみである。B737などの小型ジェット機が飛ぶには最低でも1500m、B767などワイドボディジェット機には2000m、B747ジャンボ機による国内線の離陸には2500m、B747やB777による欧米便の離陸などには3000mがそれぞれ必要である。成田や関空など国の玄関になるような国際空港では、あらゆる機種の貨物便の離陸や悪天候時でも着陸できる長さが求められるため、3500mや4000mの滑走路を持つ。4000m滑走路は必要に越したことはないが、3500mでも現在の運用には差し支えないというのが現状である。

関西空港B滑走路に関しては、海上なので用地確保は容易であるが、高額な着陸料の影響で便数は増えず、費用対効果の点では微妙なところである。滑走路の長さに関しては発着する機体に注目されがちだが、同じ機体でも国内線の旅客便と国際線の貨物便でかなり異なる。重さと同時に長距離必要なのが、離陸中にエンジントラブル等で離陸中止が必要な場合で、それを想定して長さが決まる。離陸時、離陸決定速度に達する直前でトラブルがあったとして、離陸中止に必要な長さが求められるためである。滑走路の長さが足りないと思われるのは、成田空港のB滑走路(2500m)である。当初、A滑走路側のターミナル1が長距離便、B滑走路側のターミナル2がアジア便とする計画があったが、これは約40年前の計画で、実際そのような運用はされておらず、滑走路延伸が望まれる。

また、滑走路の数は多ければ良いというわけでもなく、滑走路の数が多いと発着便が多いとも限らない。例えば、2本の滑走路が平行に並んでいれば、片方を離陸専用、もう片方は着陸専用での使用が可能だが、十字に配置されば同時使用ができない。しかし、2本の滑走路が交差している空港は、アメリカのシカゴ・オヘア空港やオランダのアムステルダム・スキポール空港など世界にはある。理由は気象条件が関わってくるからである。航空機は向かい風で離着陸を行うことで、翼に発生する揚力が大きくなり、機体を安定させることができるが、滑走路を1本配置しても、強い横風が頻繁に吹くなら、横風用滑走路が必要になる。このため、横風用滑走路が標準の滑走路と十字で交差する形で配置される。

はじめに

かつての日本には、アジアの拠点空港として機能していた空港があった。それは、成田国際空港で、東アジアでは最も多くの航空会社が乗り入れ、周辺国に比べて就航都市も多かったからである。しかし、現在は毎年乗り入れている航空会社や就航都市が増えるアジアの空港が増加している。現在、成田空港からは74社、海外101都市と結ばれているが、韓国・ソウルの仁川空港からは86社、海外173都市、シンガポールのチャンギ空港からは101社、海外207都市と結ばれている。

また、日本の国際空港には多くの課題を抱えている。成田空港は夜間に全く発着できず、国内線も少なく、都心からも遠いうえに、発着枠が満杯で、新たな乗り入れ、増便ができない。一方で、発着枠に余裕がある関西国際空港や中部国際空港は、海上空港ゆえに維持費がかさむので、航空会社が乗り入れに際して生じる着陸料に転嫁されている。このため、関空は62社、海外66都市、中部は25社、海外27都市しか結ばれておらず、立派な施設を持て余している状態である。
アジア各国の空港が需要を伸ばしている中、かつての日本の空港の勢いを取り戻すために、2020年の東京五輪開催に向けて、世界中の人々を日本の空の玄関で歓迎する態勢を整えるために、日本の国際空港がアジアの拠点空港として機能する必要性が求められている。

そもそも空港では、航空機の離着陸、旅客や貨物の積み下ろしだけでなく、航空機の整備・補給能力、旅客や貨物の集配拠点といった役割が求められる。空港には、旅客や貨物の積み下ろしの設備であるターミナルビルや、航空機が離着陸するために必要な滑走路、ターミナルビルと滑走路の間に駐機場が並ぶエプロン、航空機がターミナルを離れて滑走路に向かうための道である誘導路、霧などの視界不良で航空機が着陸できないことを防ぐために、地上側から航空機を誘導するILS(計器着陸装置)、航空機を安全に離着陸できるように導く管制官が配置された管制塔がある。